𡈽井さんとは、とあるデザイナーさんを通じて知り合ったんですね。もう30年ぐらい前になると思いますが、我が家の庭を触るタイミングで、その方を通じて𡈽井さんをご紹介いただいたんです。

うちの庭は、もともと南側に日本庭園があったんですね。ただ、私は関東の方の庭が好きでね。当時、ホテルオークラをよく利用していたんですが、そこの庭園は大きな木と下草みたいな低層の木で構成されてるんです。そうすると上から葉が落ち、それが腐葉土になって、その辺の木を全部育てるんですよ。自然の循環がそこで形成されてるんですね。私は、そんな場所にいるとすごく気分が楽になってね、我が家の庭もそんな森に囲まれているみたいな庭にしたかったんです。そんな庭を創れるのは、当時𡈽井さんしかいなかったですね。

私が𡈽井さんにお伝えしたのは、芝生を植えて、芝生の向こうに森がある。芝生の手前に小さな森があるみたいな雰囲気の庭園にしてほしいということぐらいです。木の種類、どんな花が四季を彩ってくれるかそれをすべて見事にデザインしてくれました。
できてから30年近く経ってるけど、この木々の中には、種を鳥が運んできて育った木も何本かあるんです。それも含めて大事に育てて今の森が形作られています。自然というものをよくご存知なんですね。鳥と一緒に𡈽井さんが育ててくれてるといいますか。

朝起きて、どしゃぶりでなければほとんど庭に出るんですよ。庭に出ると、木の音等、全く違う表情をしてるんですね。葉っぱが増えているってこともありますし、葉っぱの色がツヤツヤに輝いているとか、蝶々が飛んできたりとかね、葉っぱの周りを見ることができる。そうすると季節感がわかりますよね。そういった季節感もあるんだけど、やっぱり癒してくれる、自分を。
樹木の中で生活ができる。毎日違った風景を醸してくれるっていうのはね、私にとってはなくちゃならない環境だと思います。