特別対談

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Date : 2023.07.28

At : 越前古窯博物館

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進士五十八×土井直樹

対談者二人の記念撮影写真

造園は、地域や環境に根ざした
「風景の錬金術」

𡈽井:

ところでいま先生は、福井県の政策参与として、観光的面でのアドバイス等にご尽力していますね。

進士:

いろいろ取り組んでいますが、𡈽井君が関係したことも意識している、新幹線開業後の福井で、どうやって『養浩館』を商品化するかです。二十数年前に私の提案で、全国的な「大名庭園サミット」という大名庭園の協議連携組織を立上げ、遅れて『養浩館』もそれに参加します。大名庭園といっても『後楽園(岡山県)』とか『兼六園(石川県)』、『栗林公園(香川県)』などと比べると、『養浩館』はスケールがちょっと小さい。他県では、いろいろ発信し、どこも県の管理でアピールしてるんですけど、福井はその辺が控えめなんで、何とかちゃんと発信し、凄さを分からせたいと思っています。
一軒の建築だけやっても一つの庭だけでもダメです。新幹線沿線の風景も注目されるように変えなきゃいけないし、公共施設のいろんな運営も、もっとソフトを充実しなきゃいけない。それは県だけでもダメで、市町も一生懸命やってくれないと。

𡈽井:

あまりにも点と点であって、線としての繋がりが薄いんですね。これはビジターファーストではないですね。観光客に不親切ですね。

進士:

「作庭記」に戻りますが、冒頭に、「石を立てんこと先づ大旨を心得うべき也」と書かれています。石を立てるというのは庭を作ることの意味です。石は植物と違って何百年も続くので庭の構成の”要”になるんです。次はそこここに美しい名所を思いながら景色を作るのですが、それは池の回りや地形に従って風景を作るんです。土地の形、凸凹を活かすべきなんです。真っ平らじゃ変化がないから池を掘って、掘った土で山を築いて変化をつける。それで庭を山水ともいう。山を築いて水を蓄え池を作るから、庭園を山水とか林泉と言う。平凡な土地を変化のある素晴らしい風景に変えるんです。私は造園を「風景の錬金術」と言ってきたんです。

進士・土井のスナップショット

𡈽井:

日本人なら誰でも考えることで、ちょっと小高い丘だったら、福井の人たちであれば、青葉山や日野山を見て、若狭富士や越前富士と富士山に見立てるんですよ。”集団表象”というか、そういうものを持っているように作ったり、引用して作品を作っていかないと理解してもらえないですね。

進士:

もちろん独自の方法でやってる造園家もいます。それはモチーフ、テーマ、コンポジション等の構成力がすごくて、それなりの作品性を持てばいい。ただ大体の場合はそれほどオリジナリティのある作品性を持っている造園家は少ない。そこは、それでこの業界の課題ですね。

𡈽井くんには、目の前にいる後継者と目される候補者たちに、自分ならではの方法でやってきた、これまでの経験の凄さを伝えていってほしいね。

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